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君の胸で野いちごをつぶしてみたかった ── 北海道のワイルド・ストロベリー

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さえき奎
混沌と整然
「混沌と整然」 Canon EOS 5Ds R, EF24-105mm F4L II IS USM, f11, 1/500sec., ISO100, WB:Daylight)
左右に出現した幻日と上部タンジェントアークに崩れた飛行機雲とその影。こんな雲に出現する幻日は、出たり消えたり忙しく、片時も目が離せない。

「野いちご」

赤い実 かわいい実を
野原で 見つけたよ
野いちご 野いちごだよ
みんなで 取ろうよ

小鳥も 鳴いてるから
摘み摘み 遊ぼうよ
野いちご 野いちごだよ
おいしい 実だよ

出典:「野いちご」(フィンランド民謡 訳詩:清水たみ子)
 野いちごを食べたことのある人はいるだろうか? 実は、この「野いちご」という概念が大変曖昧だ。いちごには大きく分けて草本(そうほん)のいちごと木本(もくほん)のいちごの二種類がある。どちらもバラ科のであることは共通しているのだが、日本ではこれらが無意識のうちに混同して使われているからだ。前者は店で買うことができる栽培品種のオランダイチゴ属の仲間だ(最近だと「とちおとめ」「あまおう」「とよなか」などの品種が有名)。一方キイチゴ属である木本の方の木いちごは、野生種では橙色の実をつける「モミジイチゴ」や赤い実の「エビガライチゴ」「クマイチゴ」「ナワシロイチゴ」などがあり、木本のくせに「クサイチゴ」なんて紛らわしい名の木いちごも赤い実だ。さらには黒い実の「クロイチゴ」(ブラックベリーとは別種)などというのもあって種類も豊富だが、草本のいちごと違って我が国ではあまり営利栽培されていない。欧米ではどちらも盛んに栽培されており、前者をストロベリー(Strawberry)、後者をラズベリー(Raspberry)と呼んで明確に区別している。ちなみに冒頭のフィンランド民謡「野いちご」は、この訳詞からではどちらなのか判然としない。原語を調べてみようと思ってもフィンランド語はわからないが、どちらかというと木いちごっぽい感じはする・・・。
 この記事においては、ストロベリーの方を野いちごラズベリーの方は木いちごと呼ぶことにする。今日俺が話したいのは野生のストロベリーの方だ(木いちごも負けずに美味いのだが、また別の機会に紹介させてもらうこととしたい)。子供の頃、野いちごも木いちごも、初夏から夏にかけての子供たちのうれしいおやつだったが、特に野いちごは側に寄るだけでいい匂いがするし、食べるととてもやわらかく甘いので人気があった。実が小さいというだけで、店で売っているいちごと何もかわらない味だったから、日当たりのよいの斜面を友人たちと競って探したものだ。俺はずっとこの野いちごは「シロバナノヘビイチゴ」だと思っていたが、大人になってよく調べてみると「シロバナノヘビイチゴ」は北限が宮城県あたりで北海道には自生していないことがわかった。もう一種「ノウゴウイチゴ」というのもあるのだが、これは高山から亜高山帯にのみ生育しており、しかも花弁が7~8枚あるので明らかに違う。しかし、どの植物図鑑を見ても我が国に自生する野生のオランダイチゴ属はこの二種だけだと書いてある。
 では俺が盛んに食いまくっていた、あの明らかにオランダイチゴ属の野生のイチゴは何だったのか。実はそれが「エゾヘビイチゴ」と近縁種の「エゾクサイチゴ」だったのだ。もちろん「シロバナノヘビイチゴ」とも近縁種なのだが、ヨーロッパ原産の帰化植物だったってわけだ(図鑑に載ってないはずだ)。これが北海道では至る所に自生しており、子供たちの貴重なおやつとなっていたんだね。最近はエキノコックス症の感染が怖いんだが、今の子供が食べても普通に美味いと感じるはずだ。

エゾヘビイチゴ(花)エゾヘビイチゴ(果実)#1エゾヘビイチゴ(果実)#2「エゾヘビイチゴの花と果実」
出典(画像左):WikimediaImages 氏撮影によるこの画像は Pixabay から提供されています。
出典(画像中):Angelina Ho. 氏撮影によるこの画像は Pixabay から提供されています。
出典(画像右):Wieslaw Zieba 氏撮影によるこの画像は Pixabay から提供されています。

 ところで「ヘビイチゴ」なんて名前がついているとあの黄色い花を咲かせる「ヘビイチゴ」を思い出す人もいると思う。しかし、あれはバラ科ではあるが「キジムシロ属」の植物で野いちごの仲間ではない。ついでに触れておくと、「ヘビイチゴ」を毒だと思っている人も多いと思うが、実はこれが大変な誤解で毒はまったくない。小学生の頃、友人と毒かどうかで論争になり、無毒であることを知っていた俺はその友人の目の前で食ってみせたことがある。そいつは、俺が死ぬんではないかと顔面蒼白になって謝っていたが実に痛快だった(笑)。ただし毒ではないが、スポンジでも食っているような食感で決して美味いものではないからおすすめはしない(笑)。
 いちごと言えばこんな話を思い出す。『タバコ・ロード』などの名作で知られるアメリカの作家アースキン・コールドウェルの作品『苺の季節』の一節だ。以下にその要約を書いてみたいと思う。


アメリカのとある地方で、苺摘みの季節に収穫を手伝っている少年少女たちがいた(今風に言えば苺摘みのバイトだろうか)。その最中に少年たちは女の子にいろいろな悪戯をして楽しんでいたのだが、中でも「苺つぶし」という、収穫のためしゃがみ込んでいる女の子の服の中に苺を放り込み、それを思い切りつぶすという悪さが流行っていた。少年には秘かに恋心を抱いている少女がいた。彼はその少女の背後にそっと忍び寄ると特大の苺を放り込んだ。彼女が驚いていちごを取り除こうとするので、少年はあわててそれを思い切り叩いた。彼女の白いブラウスに赤い苺の染みが広がり、いつもなら互いに笑ってそれでおしまいとなる他愛のない悪戯のはずだった。しかし、彼女は胸を押さえてうずくまると、涙目で少年を見つめ「ここはぶっちゃだめ。痛いんだから」と言った。少年はそこで初めて自分が誤って彼女の胸を叩いてしまったのだと気がつく。


 このシーンを読んでいる時、彼女に負けないくらい俺の胸もきゅんとしたんだよ。そして、しーちゃんを野いちご狩りに誘って、これをやってみたいなあと思っていたんだ。もちろんあの少年のような無作法なやり方じゃなく、そっとやさしくつぶすんだけどね。今さらだけど、何が何でもこのシチュエーションを設定して実行すべきだったと心から後悔しているんだ。たとえ俺の頬に赤いモミジの形をした模様が浮かび上がろうと、野いちごにだって負けないくらい香り高く甘酸っぱくて切ない最高の想い出になっただろうな。絶対にこっちにすべきだった。しーちゃんには赤いいちごの染み、俺には赤いモミジの模様。素晴らしいアンサンブルだと思わないか。嗚呼、この意気地なしめ。はたして俺に次のチャンスは来るのだろうか・・・。

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さえき奎
Posted byさえき奎

Comments 8

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2019/07/12 (Fri) 15:20 | EDIT | REPLY |   
さえき奎
さえき奎  
おっしゃるとおりです

黒ゆとりさん、こんにちは。いつもありがとうございます。

> えっ……痛いって分かってるならやっちゃだめじゃないですか……。

えーと、あのガキんちょのようにやったら痛いとわかっているからこそ「そっと、やさしく」つぶすつもりでした・・・では答えになっていないでしょうか?

> 私だったらビンタどころじゃ済まないです。
> (こいつ人のことなんだと思ってんだ!?)
> って、色々冷めます。
> しーちゃんさんはそういう人じゃなかったかもしれないですけど……。

いや「ああいうふうにやられたら」しーちゃんに限らず誰だって切れると思います。もし私だったら完全にブチ切れて何をするかわからないと思いますよ(笑)。

2019/07/12 (Fri) 12:52 | EDIT | REPLY |   
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承認待ちコメント

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2019/07/12 (Fri) 12:45 | EDIT | REPLY |   
さえき奎
さえき奎  
Re: こんばんわ!

ねこニャン’19さん、こんにちは。いつもありがとうございます。

> イチゴのように甘酸っぱい思い出。。何だか少し?エロティシズム的ですか(*^。^*)

えーと、いやあ鋭いですね。エロティシズムというかエロって沈むというか(しどろもどろ)・・・まあ、そうですね(笑)。

> 実現はしてないようですが・・実現すれば、間違いなく頬にモミジだったんでしょうね?
> (*ノωノ)

私がしーちゃんに対して、あのガキがやったように乱暴にするわけがありません。そっとやさしくやりますので多分モミジには・・・なるかな、やっぱり(笑)。

2019/07/12 (Fri) 12:40 | EDIT | REPLY |   
さえき奎
さえき奎  
Re: ヘビ苺と新潟では言っておりましたね☆

がちょーさん、こんにちは。いつもありがとうございます。

> 野いちご、こちら新潟にもありましたよ^^
> 小学生の時に道端の食べてました(笑)

やっぱりみんな食べてるんですね(笑)。新潟ですと「シロバナノヘビイチゴ」だと思います。

> こちら新潟では野いちごを蛇いちごと言うのですよ!!
> なぜなら、ヘビが食べやすいからww

そうなんですか。それは初耳でした(笑)。そうすると「毒だ」と言われている黄色いの花が咲く本物の「ヘビイチゴ」の方は何と呼んでいるのでしょうか。

> 地方によっては野イチゴも呼び名が違うかも知れませんよね。
> 私らはヘビ苺で通ってましたv-291

そうなんですね。先日ご紹介した「ギョウジャニンニク」を北海道では「アイヌネギ」と呼ぶように、山菜とか野生の果実なんかもそれぞれの地方独特の呼び方があると思いますので調べてみると面白そうです。

2019/07/12 (Fri) 12:30 | EDIT | REPLY |   
黒ゆとり  

えっ……痛いって分かってるならやっちゃだめじゃないですか……。
私だったらビンタどころじゃ済まないです。
(こいつ人のことなんだと思ってんだ!?)
って、色々冷めます。
しーちゃんさんはそういう人じゃなかったかもしれないですけど……。

2019/07/12 (Fri) 00:52 | EDIT | REPLY |   
ねこニャン’19  
こんばんわ!

イチゴのように甘酸っぱい思い出。。何だか少し?エロティシズム的ですか(*^。^*)
実現はしてないようですが・・実現すれば、間違いなく頬にモミジだったんでしょうね?
(*ノωノ)

2019/07/11 (Thu) 22:32 | EDIT | REPLY |   
がちょー  
ヘビ苺と新潟では言っておりましたね☆

野いちご、こちら新潟にもありましたよ^^
小学生の時に道端の食べてました(笑)
こちら新潟では野いちごを蛇いちごと言うのですよ!!
なぜなら、ヘビが食べやすいからww

地方によっては野イチゴも呼び名が違うかも知れませんよね。
私らはヘビ苺で通ってましたv-291

2019/07/11 (Thu) 21:17 | EDIT | REPLY |   

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