ベッケルはバーボンなんかよりずっと酔える 第1回

今宵は、スペインの国民的詩人グスタボ・アドルフォ・ベッケル(Gustavo Adolfo Bécquer, 1836年2月17日 - 1870年12月22日)の作品をご紹介させていただきたいと思う。以前にも何度か、ご紹介したこともあるのでご存じかも知れないが、高校時代の俺はベッケルにかぶれていた(笑)。寝ても覚めても、何とかベッケルのような詩を書いてしーちゃんに捧げたい、そんなことばかり考えていたんだよね(笑)。今回は「違う翻訳でも読んでみたい」というMINAさんのご要望にお応えして、俺のお気に入りの二篇を二人の翻訳者の訳で読んでみていただきたいと思う(というか、この両先生以外の翻訳は見当たらないんだよね)。
¿Qué es poesía?, dices mientras clavas
en mi pupila tu pupila azul.
¡Qué es poesía! ¿Y tú me lo preguntas?
Poesía... eres tú.
(スペイン語原詩)
What is poetry? you ask, while fixing
your blue pupil on mine.
What is poetry! And you are asking me?
Poetry... is you.
(英語訳)
──詩ってなあに? ・・・・・・きみの二つの青い眼が
ぼくの眼につきささる
それを僕に訊くなんて
詩・・・・・・きみが詩なのだ
(荒井正道 訳)
詩っていったい何なの? 君が僕の瞳に
君の青い瞳をじっと注いで言う。
詩って何か、だって! 君が僕にそんなことを聞くの?
詩って・・・・・・そうだ、君のことさ。
(山田眞史 訳)
Tu pupila es azul y cuando ríes,
Su claridad suave me recuerda
El trémulo fulgor de la mañana
Que en el mar se refleja.
Tu pupila es azul, y cuando lloras,
Las transparentes lágrimas en ella
Se me figuran gotas de rocío
Sobre una violeta.
Tu pupila es azul, y si en su fondo
Como un punto de luz radia una idea,
Me parece en el cielo de la tarde
¡Una perdida estrella!
(スペイン語原詩)
Your eye is blue, and when you laugh
its soft brightness reminds me
Of the shimmering glint of morning
that is reflected in the sea.
Your eye is blue, and when you cry,
the transparent tears in it
seem to me drops of dew
upon a violet.
Your eye is blue, and if in its depths
like a point of light an idea radiates,
it seems to me a
lost star in the evening sky! Ah!
(英語訳)
笑うあなたの青い眼の
やさしい光は
夜明けの海に
揺らぐきらめき
泣いているあなたの瞳の
澄んだ涙は
すみれの上の
露の雫
青いあなたの眼のおくの
ほのかな思いは
夕空の
流れ星
(荒井正道 訳)
バイロン風に
あなたの瞳は青、そして笑う時、
そのやわらいだ明るさは 僕に思い出させる
海に映る朝の
ゆらめく光を。
あなたの瞳は青、そして泣く時、
瞳のなかの透き通った涙は 僕に思わせる
すみれの上の
露の滴を。
あなたの瞳は青、そしてもしその奥に
光の点のようにひとつの思いが
僕には見える 夕空の
流星に。
(山田眞史 訳)
出典(荒井正道 訳):『抒情小曲集』所収 (世界名詩集大成第14巻 南欧・南米編 平凡社 昭和35年/1960年刊)
出典(山田眞史 訳):『ベッケル詩集』所収 (彩流社 平成21年/2009年刊)
自分は、高校時代からずっと荒井正道氏の訳を愛読していた。というか、当時はベッケルの翻訳というと、それくらいしか入手出来なかったというのが本当のところだ。21世紀になって、山田眞史氏の翻訳に初めて触れた時は、とにかく新鮮だったというのが偽らざる印象だ。どちらの訳がどうとかいうことではないが、翻訳は本当に難しく、それ故に魅力を秘めているのだと思う。本詩集"Rimas/Rhymes"(抒情小曲集)の原典については、不幸なエピソードや問題もあるらしいのだが、この記事の趣意とするところではないので、とりあえずは触れないでおこうと思う。

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