【再掲】 見出しは簡潔に、力強く、ドラマチックに!── 映画『シッピング・ニュース』から心に残るシーンについて書いてみる

「『大天使降臨か?』なんてのはフェイク見出しです」 Canon EOS 5Ds R, EF24-105mm F4L II IS USM, f11, 1/500sec., ISO100, WB:Daylight
"The Cider House Rules(サイダーハウス・ルール)や"Chocolat"(ショコラ)などの名作で知られるラッセ・ハルストレム監督の2001年作品"The Shipping News"(シッピング・ニュース)の心に残るシーンについて書いてみたいと思う。まあ、主演のオスカー俳優ケヴィン・スペイシーは、少年への性的暴力問題で映画界から総スカン状態になっているが、本作とはとりあえず関係はないのでご了解いただきたい。
余談なんだが、この作品ではジュリアン・ムーアがヒロイン、ウェイヴィを演じている。彼女は同じ年に公開された"The Silence of the Lambs"(羊たちの沈黙)の続編"Hannibal"(ハンニバル)で、ジョディ・フォスターに代わってクラリス・スターリング役を演っているんだよね。大変失礼ながら、鑑賞前はちょっと不安に思っていたんだけれど、なかなかよかった。

出典:Miramax Films
ニューヨークの新聞社でインク補充係(輪転機のインクが少なくなったら補充するだけの仕事)として働くクオイルは、少年時代に父親から虐待されたことで心に深い傷を負っていて、無気力で怠惰な人生を送っていた。両親の自殺や、娘を人身売買組織に売り払おうとした妻が駆け落ちの途中交通事故で死亡するなど、様々な事件が起こってクオイルは破産同然となる。娘ともしっくりいかなくなったクオイルは、叔母アグニスから「人を失った悲しみは時が経たないと癒えない」「祖先の地ほど心が安らぐところはない」とアドバイスを受け、共に祖先の地、ニューファウンドランド島へ引っ越すことにする。
ニューファウンドランドには父やアグニスの生家が50年経つ今もまだ残っていた。厳しい自然と地域社会になじめないまま、クオイルはシッピング・ニュース(港湾新報)という小さな地元紙に就職するのだが、ニューヨークで新聞社勤務の経験があるということだけで記者をやるように命じられる。インク補充係だったクオイルがまともな記事を書けるはずもなく、業を煮やした編集長は先輩記者のビリーを教育係につける。ビリーはクオイルを外へ連れ出す。
ビリー:クオイル、お前の記事はスペルや文法的には正しい・・・。だが、心に響くものがない。記者としての魂がこもっていないんだ。まずは見出しの練習からやってみようか。簡潔に、力強く、ドラマチックにな・・・。
(水平線上に垂れ込める暗雲を指さして)あれで見出しを作ってみろ。
クオイル:「黒い雲が水平線を覆っている」。
ビリー:(首を振りながら)それじゃ駄目だ・・・。「街に嵐迫る!」と、こうやるんだ。
クオイル:嵐が来なかったらどうするんですか?
ビリー:その時はこうだ。「嵐の危機去る」。
その後、街に本当の嵐が襲来し、死んだと思っていた編集長が奇跡的に蘇生するなどという事件も起きる。クオイルに「母親は天使と眠っている」と教えられていた娘は「お母さんも起こしてくれ」と責めるのだが、ここで初めて娘と真摯に向き合って真相を話す。彼女もそれを受け入れクオイルと和解する。海岸の崖の上に立つ父親の生家も、嵐で跡形も無く吹き飛ばされていたが「嵐で死んだと思った人間が生き返るくらいだから、傷ついた心だって癒えると思う」と前向きに考える。ラストはクオイルのモノローグで締めくくられる。
見出し・・・「大嵐、家を吹き飛ばし絶景をプレゼント!」
かいつまんで言えば「簡潔に、力強く、ドラマチックに!」という見出しの極意をクオイルが習得するとともに、心の傷も癒えて行く過程を描いているわけだが、その点では「見出しは簡潔に、力強く、ドラマチックに!── 映画『シッピング・ニュース』から心に残るシーンについて書いてみる」なーんて「長くてくどくて、何がいいたいのかさっぱりわからず、ドラマチックでもない」この記事の見出しなんかは完全に「ちょっとビリーに教わって来い!」となるレベルですな(笑)。もう一つ大事なところは、嵐が来なかった場合は「嵐の危機去る」とフォローすることを教えている部分だ。無責任なフェイクニュースを垂れ流すばかりで、これを一切やらないマスゴミが日本には何と多いことだろう・・・アカヒ新聞とか侮日新聞とか頭狂新聞とかテレビアカヒとか低尾壊死とかイヌアッチケーとか。
新聞の見出しとくれば、東スポ風の見出しについて触れないわけにはいかないだろう。
首相 キムチ国と断交決意 か?
さえき奎 アルコール依存症で入院 か?
「酒とソラの日々」不人気で打ち切り か?
などなど(笑)。まあ、一般紙だって似たような見出しをつけることがある。例えば
今日衆議院解散 へ
なんて感じの見出しだ。こういうのは書く方も読む方も暗黙の了解の上でやっているので、いちいち目くじら立てるのは野暮というものだ。使ってみたい衝動には駆られるが・・・(笑)。それにしても、あの見出しの末尾に添えられた「か?」の、これ以上大きくしても小さくしても見出しの効果を損ねてしまうであろうという、絶妙のサイズ感は敬服に価する(笑)。
最後に言い訳というか弁解というか一言述べさせてもらえれば「簡潔で、力強く、ドラマチックな」見出しは、確かに理想的でキャッチーなんだけれど「逆もまた真なり!」ってことなんだよね(笑)。

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