[三訂版] 「ウスユキソウ」が「日本のエーデルワイス」ではなく「エーデルワイス」が「西洋ウスユキソウ」である理由(わけ)

オオヒラウスユキソウ (下)
出典(写真左):「ハヤチネウスユキソウ」(2017年9月16日 (土) 12:37 UTCの版)『ウィキペディア日本語版』

出典(写真右): 「セイヨウウスユキソウ」(2019年5月18日 (土) 01:36 UTCの版)『ウィキペディア日本語版』

出典(写真下):「北の大地『植物図鑑』」に掲載されていたこの作品は著作者である「北遊ホクユウ」氏の許諾を得て転載しています(このサイトは、令和元年/2020年12月のYahoo!ブログのサービス終了に伴い閉鎖されたようです。詳細は記事の最後にある「追記」をご参照ください)。
最近往年の名画「サウンド・オブ・ミュージック」を酔いに任せてだらだらと観た。もう何度観たかわからないくらいだが、観る度に新たな感動がある。まあ、それが名画と言われる所以なんだろうな・・・。
それで思い出したのが、本ブログ開設間もない頃に書いたエーデルワイスに関する記事のことだ。改めて、是非ご一読いただきたいと思った。いや、俺の記事がどうこういう問題ではなくて、まずは上の画像を見てほしい。この素晴らしい「オオヒラウスユキソウ」や「ハヤチネウスユキソウ」そして「セイヨウウスユキソウ(エーデルワイスともいう)」の画像を見較べていただきたい。実はこれ、全て同科同属の花なんだよね。どれがエーデルワイスなのか、すぐにわかる人は決して多くはないと思う。
今回の[三訂版]記事のアップに際して、記事タイトルを「『ウスユキソウ』が『日本のエーデルワイス』ではなく『エーデルワイス』が『西洋ウスユキソウ』である理由(わけ)」と改題させていただいた。ご了承願いたい。
アルプスの妖精とも氷河の星とも呼ばれる高山植物エーデルワイスのことは、ミュージカル映画「サウンド・オブ・ミュージック」で歌われた同名の挿入歌で知った方も多いのではないだろうか。エーデルワイス(以下セイヨウウスユキソウと記す)の名は、ドイツ語の"edel"(高貴な、気高い)と"weiß"(白)に由来している。花言葉にもなっている「純潔」の象徴として様々な団体の名称や商品名に使用されるなど、ヨーロッパをはじめとする多くの国で愛されている。
ところで、セイヨウウスユキソウ(エーデルワイス)はキク科ウスユキソウ属の植物で、日本にもその仲間が何種類も自生していることをご存じだろうか。結論からいうと、7種2変種もあるのでこれを列記してみる。
ウスユキソウ
エゾウスユキソウ(レブンウスユキソウ)
オオヒラウスユキソウ
ミヤマウスユキソウ(ヒナウスユキソウ)
ホソバヒナウスユキソウ(ミヤマウスユキソウの変種)
ハヤチネウスユキソウ
ミネウスユキソウ(ウスユキソウの変種)
カワカミウスユキソウ
ヒメウスユキソウ(コマウスユキソウ)
この他に紀伊半島や四国に分布する小型のウスユキソウを「コウスユキソウ(コバノウスユキソウ)」と呼んでウスユキソウの変種とする説もあり、それを採用する場合は全部で7種3変種となる。
お気づきのように「ウスユキソウ」以外は全て「何々ウスユキソウ」(漢字で書くと「薄雪草」)と呼称され、セイヨウウスユキソウ(エーデルワイス)と同様に花弁に白い綿毛が密生しているので薄く雪でも被ったように見えることがその名前の由来になっているんだよね。「高貴な白」というのも悪くはないんだけど、「薄雪草・ウスユキソウ」というネーミングの方がずっと洒落た響きと雰囲気があると言ったら身贔屓が過ぎるだろうか(笑)。ちなみにウスユキソウ属の花言葉には「大切な思い出」というのもあるんだけど、これもすごくいいと思う。
上掲のハヤチネウスユキソウ・セイヨウウスユキソウ(エーデルワイス)・オオヒラウスユキソウの写真をご覧いただきたい。よく似ているよね。まあ、同属の植物なので当たり前の話なんだけれど、このウスユキソウが「日本のエーデルワイス」なんて言い方で紹介されることが多々ある。西洋崇拝とか外国コンプレックスなどとは思いたくはないんだけど、無意識のうちに培われた何らかの鬱屈した心理が働いた結果であるような気もするんだよね。「別にいいじゃないか。エーデルワイスは世界的ブランドなんだから」などという意見もあるとは思うよ。だけど、ヨーロッパに生育するウスユキソウ属はセイヨウウスユキソウ(エーデルワイス)の他にはかなり形態が異なるもう一種があるだけなんだよね。だからウスユキソウ属の植物に関しては、7種2変種が自生する我が国の方が、絶対に本場であると思う。実際に画像をご覧いただいてどうだろう? 日本の両種ともまったく負けていないばかりか、より端正で秀麗な姿だと俺は思うんだよね。「日本のエーデルワイス」とか「エーデルワイスみたい」なんて言われ方をすると、この両種だけではなく日本のウスユキソウ一族の面々も決していい気分はしないはずだと思うよ(笑)。オオヒラウスユキソウやハヤチネウスユキソウの両種などはもっと気の毒で「エーデルワイスに一番よく似ている花」なんて失礼極まりないフレーズを添えて語られることが多い。きっと「私があっちに似ているんじゃなくて、あっちが私に似てるんじゃないの・・・」などとボヤいているだろうな(笑)。ご参考までに書き添えると、以前はオオヒラウスユキソウをハヤチネウスユキソウの変種とする見解もあったそうなんだが、花のつく茎の葉の数や形が異なり雌雄異株の傾向が強いことから、現在はハヤチネウスユキソウとは独立した別種とされているそうだ。この「ハヤチネ」や「オオヒラ」の名は、それぞれの自生地である「早池峰山」(岩手県)、「大平山」(北海道後志総合振興局管内)から採られたものだ。
何を何と呼ぼうと人様の勝手であることは百も承知なんだけれど、ここはあえてエーデルワイスの方を「セイヨウウスユキソウ」(これは俺が勝手に名付けたものではなく正式な和名だからね)と呼ぶのが筋だと思うので、そのように強く提言したいと思う。例えばチェスのことを「西洋将棋」とは呼んでも、将棋のことは「日本チェス」なんて絶対に言わないよね(将棋のことを知らない外国人に説明する場合なんかは別だよ)。俺はかなり以前からこの様に主張していたんだけど、最近オフィシャルな資料などではようやく"セイヨウウスユキソウ(エーデルワイス)"などとセイヨウウスユキソウの方にプライオリティを置いた表記が多くなって来たのは喜ばしい限りだ。
ただし、日本には7種2変種が自生していると書いたものの、ウスユキソウ属の植物は元より高山植物であるから、その生育環境は大変厳しいものがあるんだよね。そもそもその分布が、礼文島や大平山、早池峰山などごく狭い範囲に限定されているにもかかわらず、心ない登山者が持ち帰ったりプロの盗掘者も後を絶たないと聞いている。環境省レッドリストに載る絶滅危惧種も多いので、大切に保護して行きたいものだ(エゾウスユキソウ・オオヒラウスユキソウ・ホソバヒナウスユキソウが絶滅危惧種、ヒメウスユキソウが準絶滅危惧種)。
また、ついでに書き添えると、ウスユキソウにしてもセイヨウウスユキソウ(エーデルワイス)にしてもかなり地味な花なんだよね(高山植物は概してそうなんだけど)。写真はそれだけをアップしているのですぐにわかると思うが、もし植物にあまり詳しくない方だと、自然の中では見つけることさえ難しいかも知れない。もし運良くどこかで見かけることがあっても、がっかりしないように(笑)。
ちなみに、「タカネウスユキソウ」という別名もある高山植物の「タカネヤハズハハコ」は、キク科ヤマハハコ属の多年草なのでウスユキソウの仲間ではないがよく似た花だ。また、野原によく生えている「ハハコグサ」(春の七草の一つ)も、同じキク科のハハコグサ属の花でウスユキソウ属に近い植物だ。キク科の仲間によく見られる頭状花序(多数の花が集まって一つの花の形を作る)であることやウスユキソウ属のように花弁(正確には苞葉)ではないが葉の裏側に薄く綿毛が密生しているところなどもよく似ている。ウスユキソウやセイヨウウスユキソウ(エーデルワイス)などはなかなか目にする機会もないので、ハハコグサでも眺めて想いを馳せるのも一興かも知れない。
最後にもう一度、ウスユキソウ属の花たちの、もちろんセイヨウウスユキソウ(エーデルワイス)を含めてだが、花言葉をご紹介して本稿のペンを置きたいと思う。
ウスユキソウ属の花の花言葉:「大切な思い出」「高貴」「崇高」「純潔」「高潔な勇気」「大胆不敵」
[二訂版掲出に際しての追記:令和元年/2019年6月2日]
この記事を掲出するにあたり「北の大地『植物図鑑』」というブログ・サイトに素晴らしいオオヒラウスユキソウの写真があることを知り、オーナーである「北遊ホクユウ」氏に転載許可をお願いしていたところ、この度ご快諾をいただきました。心から感謝いたします。ありがとうございました。「北の大地『植物図鑑』」には、オオヒラウスユキソウの他の写真や生育地の様子などの興味深い写真や記事も掲載されていますので、関心を持たれた方は是非行ってみてください。それにしてもこのオオヒラウスユキソウの写真は素晴らしい。清冽な美しさです。このような花が咲く地に生まれた道産子として誇りに思います。
今回転載のご承諾をいただいたことにより、写真を追加・再構成し記事内容も一部修正の上「二訂版」としてアップいたしました。ご了承願います。
[三訂版掲出に際しての追記:令和2年/2020年5月30日]
「北遊ホクユウ」氏がオーナーのブログサイト「北の大地『植物図鑑』」は、令和元年/2020年12月のYahoo!ブログのサービス終了に伴い閉鎖されたようです。我が故郷北海道をメインに、素晴らしい植物や自然の写真が満載されたサイトだったので大変残念に思っていたところ、同氏が「孝遊子」のHNで別途展開する姉妹ブログサイト「孝遊子のブログ(旧:「野草閑話」~孝遊子)」の方へ事実上旧ブログの内容が移行されているようなので安堵しました。そのためリンク先を姉妹ブログへ訂正し、記事の内容も一部加筆修正の上「三訂版」として再度アップいたしました。
同サイト内の「オオヒラウスユキソウ」に関する記事と写真は「大平山で出会った花々③~オオヒラウスユキソウ」にあります。素晴らしいサイトですので、ご関心のある方は是非ご参照ください。
尚、孝遊子さんは現在闘病・リハビリ中とのことで、しばらく更新が途絶えているようです。一日も早いご回復を心より祈念するものです。

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