何故俺が演劇の道を断念したのか [前編] ── そもそもあんたって誰なのよ?(ロング・インタビュー その10)

今日の関東地方は久々に朝から晴れ上がった。夕刻には心地よい風が吹いて来て、まさに北海道サマーの一日だった。そんな宵をベランダに出てモヒートもどきスペシャルで楽しんだ。ああ、
ということで本日の記事も「カミ」つながりで行ってみよう(笑)。
たき:みなさま、ご無沙汰しております。さえき奎の「総秘書」のたきです。
さわ:やほ、やほ~、しばらくでした。同じく「第一秘書」のさわで~す。
奎:総秘書に第一秘書って、何だか赤い国の幹部みたいだな(笑)。でもさ、ご無沙汰って言うけどインタビュー記事はこないだやったばかりだろ?
たき:何言ってるんですか。あれは再掲記事ですから。
さわ:そうですよ。前回の「こしあん派とつぶあん派の仁義なき戦い ── そもそもあんたって誰なのよ?(ロング・インタビュー その9)」は1月のことなんですから、もう何ヶ月経ったと思ってるんですか。
奎:わーったよ、わーったから(笑)。で、今日は何をやるんだ?
たき:今日のお題は「何故俺が演劇の道を断念したのか」です。
奎:え? 俺が「演劇の道を断念した」なんて、いつ誰がそったらことゆったんだよ?
さわ:去年の飲み会の時、自慢そうに話してたじゃないですか。世が世なら俺は舞台俳優になっていたとか(笑)。
奎:うーん、全然覚えがないな・・・(笑)。まあ、いいや。で、何を聞きたいんだよ?
たき:最初に演劇に目覚めたのは何時だったんでしょうか?
奎:あれは小5の時の学芸会だったなあ。その時の5年生の劇の演し物が『ヴェニスの商人』だったんだよ。
たき:えー、小学生がシェークスピアですか?
奎:演劇担当のH先生って、俺の担任の先生でもあったんだけど、文芸・芸術分野に才長けた人で大いに影響を受けた先生なんだよね。で、いきなりH先生が、俺に主演のアントーニオ(若き貿易商人。正義感が強く情に厚いという絵に描いたような主役)を演れというんだよ。何だかアントニオ猪木みたいで、すごく嫌だったんだけどさ(笑)。
さわ:親が裏で賄賂でも贈っていたとかじゃないんですか(笑)?
奎:あのな、某隣国じゃねえんだからさ(笑)。そもそも俺は、劇のメンバーに選ばれたことも不本意だったし、稽古で放課後も束縛されるだろうから嫌で嫌でたまんなかったんだよ。下校したらすぐに岩石鉱物採集に出かけたかったからさ。
たき:でも、いくら何でも小学生にシェークスピアは無理のような気がします(笑)。
奎:そうだよな(笑)。最初の顔合わせで、先生からプロットを聞かされてもよくわからなかったんだけど、何だか一休さんのとんち話みたいだなと思ったことだけは覚えているんだよ(笑)。だってさ、中世のイタリアが舞台なんだよ。当時の時代背景とかユダヤ人との軋轢とか深い意味なんか小学生に理解出来るはずもないし、実際の芝居を観ても低学年の子たちなんかまるっきりちんぷんかんぷんだったと思うよ(笑)。
さわ:それで、どうして奎さんが主役に抜擢されなきゃならなかったんですか? あまりにも不自然過ぎるじゃないですか。
奎:こらこら、何が不自然だって(笑)? 今考えると先生が「アントーニオを演れるのはこいつしかいない」と思ったのは当然だと思うんだよね(笑)。で、他のメインキャストは、
たき:外国の、しかもあの時代の演劇なんて衣装とかどうしたんですか。
奎:おふくろがえらい張り切っちゃってさ、先生が書いたイラストを参考に古着を利用した主な役柄の衣装をパパパパっとこさえちまったんだよ(笑)。問題は髪の毛でさ(お待たせしました。ここでようやくつながりました)、金髪でなければおかしいっていうんで、先生がトウキビ(筆者注:北海道ではトウモロコシのことを普通トウキビという)の髭でカツラを作ってくれたんだよ。このトウキビの髭製のブロンドカツラを被って、生まれて初めてメイクをされて(先生はメイクの道具まで持っていたんだよね)おふくろのこさえた衣装を纏うとあら不思議、ちゃんと若きイタリア人商人に見えるから不思議だ(笑)。
さわ:今の奎さんからはまったく想像もつかないですね。その時の姿を見たかったような、見たくもないような・・・(笑)。
奎:今の俺見てりゃ想像つくだろ(笑)? 前にも言ったよな。俺が紅顔の美少年だったってさ(笑)。
さわ:その紅顔の美少年が、今や酒焼けで赤ら顔のおっさんですからね(笑)。
奎:おい、読者のみなさんが誤解するようなフェイク発言はやめとけよ(笑)。まあとにかくだ、先生はアコーディオンの名手でもあったんで、劇中音楽は全部それでやってくれたし、油絵や彫刻もやる人だったから法廷の背景画なんかもあっという間に描いてくれたんだよ。で、いよいよ開演となった訳なんだが、このトウキビ髭製ブロンドの髪が揺れる度に何やらいい匂いがしてうっとりするんだけど、芝居の最中に切れたやつが何本も背中に入ってしまって、痒いやらムズムズするやらで何でもいいから早く終わってくれと、そればかり考えていたよ(笑)。


たき:でも『ヴェニスの商人』ってすごく長いドラマじゃないですか。どうやって演ったんですか?
奎:そこなんだけど、幕開け前にあらすじをナレーションで流しておいて、いきなりクライマックスの裁判のシーンから始まるってやつだ(笑)。でもナレーションやってた子がちょっと小声で、滑舌もよくなかったから観ている人は何がなんだかさっぱりわからなかっただろうな(笑)。
さわ:なるほど。それでそのお芝居は大顰蹙を買って、奎さんの黒歴史の1ページを飾ったと、そういうことですね(笑)。
奎:んな訳ねえだろ(笑)。芝居が終わった後で、校長先生にぽんと後ろから肩を叩かれて「我が校にこんな名優がいるとは思わなかったよ。長い教諭経験の中で一番よかった演劇だよ」と言われたんだぜ(笑)。
たき:ほんとですか(笑)?
奎:何で俺がウソ言わなきゃなんねんだよ(笑)。
さわ:だいぶ話を盛っちゃってませんか(笑)?
奎:あのな、H先生だって終演の後で涙ぐんでいたくらいなんだからさ。
たき:でも、トウモロコシの髭で金髪のカツラをこさえるって話に少し感動しました。
奎:さすがはたきちゃんだ。たまにはいいこと言うじゃないか(笑)。今度、北海道産スウィートコーンの人気ブランド「ピュアホワイト」をご馳走するよ。
さわ:あ、ズル~い(笑)。私もピュアホワイトの焼きトウモロコシ食べたいです。
奎:あのね、さわちゃんさ。トウキビってのは、特に最近の品種は生のままでもメロンより甘いっていわれてるくらいなんだから、北海道の農家さんの間でも「茹でるのが一番美味く食べる調理法」だってのが共通認識なんだよね。そもそも、祭や縁日の屋台で売ってる焼きトウモロコシが美味かったことなんてあるか?
たき・さわ:うーん、そういえば・・・決して美味しいものじゃないですね(笑)。
奎:あれはね、「鮮度が落ちて甘味が抜けたトウキビを誤魔化すための調理法」なんだよ。なんで、メロンより糖度が高いトウキビに醤油ダレを塗って焼いて食わなきゃならんのだよ(笑)。
さわ:でも、焼きトウモロコシってあの香ばしい匂いがそそるじゃないですか・・・。
奎:内地の人って、みんな必ずそういうんだよね、味噌ラーメンが一番美味いとか、こしあんよりつぶあんが美味いとか味覚音痴が大爆発・・・あ、これは関係ねえか(笑)。とにかくトウモロコシを焼くこと自体は別に否定するつもりはないけど、あの醤油ダレ焼きトウモロコシってやつは、味なんか二の次で祭や縁日の雰囲気や気分を盛り上げるための小道具に過ぎないんじゃないのかな。「今私はこの祭をマックスで満喫しているんだ、ウンウン」なんて感じでさ(笑)。何というか「餅は焼いた方が香ばしくて美味い」なんていう人の味覚と一緒なんだよな。一度でもつき立ての餅を食ったことがある人なら、絶対にそんなこと言うはずがないからさ。「塩鮭が生鮭より美味い」なんてこという人も同類だと思うんだけど、言って見ればしょーもない「プランBの味覚が刷り込みされてしまっている」んだよね。可哀想というか気の毒というか不幸な話だよな(笑)。
さわ:でも札幌の大通り公園の焼きとうもろこし屋台って有名じゃないですか。
奎:あの匂いは鰻屋の蒲焼きの煙と一緒で、何も知らない観光客からぼったくるための客引きアイテムなんだよ(笑)。札幌市民で、あの屋台の焼きトウモロコシが美味いなんて、そったらはんかくさいことゆうやつがいたら、ここへ連れて来てみたらいいっしょー(笑)。
たき:はいはい、トウキビのウンチクはそのくらいで・・・(笑)。あ、脱線しまくりで時間が来てしまいました(笑)。全く核心に迫れないまま終わるのは大変残念ですが、とりあえず前編の終了とさせていただきたいと思います。
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