[特別企画] せめて「言葉の花見」を ── 春愁落とし「桜の短歌祭」をやってみる

画像出典:中村昌寛氏撮影によるこの作品は写真ACから提供されています。
今日で四月も終わりだね。言うまでもないんだけど、武漢肺炎騒動のお陰で、今季の桜はゆっくりと楽しむ暇もなく散々だった。もっとも俺の故郷北海道の道東地方では。桜の開花までまだ半月ほどあるんだけど、どうやら例年通りの花見を楽しむことは絶望的な雰囲気だ。
世の中がそんな情勢でもあることだし、恒例となった特別企画で今回は「桜の短歌祭」をやってみたいと思う(花見にちなんで「大会」を「祭」に変更させてもらった)。花見が出来ないなら、せめて「言葉の花見」と洒落込んでみようという訳だ(笑)。ただし、甘く
毎度同じ事を書かせてもらう(笑)。短歌とか俳句とか聞くと、思わずドン引きしたい気持ちになるあなた。そう、あなたのことです(笑)。うーん、短歌なんて、基本三十一文字からなる短い詩に過ぎないんだよね。いうなれば、作者がその一瞬一瞬の情景や心境を切り取った「言葉の写真」なんだからさ。写真をざっと眺めるように、ざっと読み流してほしいと思う。短歌を詠むことは難しいかも知れないけれど、読むことは全然難しいことないんだからさ。あなたの心の趣くまま読み流してもらえたらよいと思う。あ、音読してみるのも一興じゃないかな。また違う発見があるかも知れないから。是非やってみなはれ(笑)。
春さらば
まずは万葉集から有名な二首をご紹介したい。二人の青年から求婚された美少女
ものの行きとどまらめやも春の雨浴びて
散るためにうまれくるものなぞなけれ桜はなびら散りやまずけり (田中あさひ)
花散らす雨へ出て行く昼さがり鞄に紙を一枚沈めて (中川佐和子)
散り頻る花はさらなる闇を呼ぶごとくに覆う野の水溜まり (中川佐和子)
「一枚の紙」が気になる。離婚届か辞表か、それとも・・・。営業やってた頃の俺なら「契約書」だと思うだろうな。
棒立ちになって見上げし桜花 わすれることはうつくしいこと (東直子)
刹那放つ遠い記憶が欲しいのか春風強く花をゆさぶる (東直子)
さくらばな「また来年」といいながら手を振る 我はまだ生きたくて (岡崎裕美子)
東京の桜はきれい自らの価値を知りつつ咲いているなり (岡崎裕美子)

画像出典:おかわりきたみ/OKAWARI KITAMI(北見市商工観光部観光振興室観光振興課)
てのひらに花びら受けて見せ合って風へと帰す春の野あそび (里見
行間を埋めて降る花踏みながら船を見に行く約束をする (里見
東直子さんにも「夜の海の客船を観にゆきましょうってゆってましたよ、はるかなはるに」という一首がある。「船を見に行く」ということが、女だけに通じる何かのメタファーなのかどうかは俺にはわからないんだけれど・・・。
第一歌集『リカ先生の夏』の再版を強く希望します。
夜桜の歌をいくつか諳んじて君の小皿に醤油を注ぐ (佐藤涼子)
花なら桜、誰が決めたか知らないが決まったことには従うものだ (佐藤涼子)
寿司かな、刺身かな? 佐藤涼子さんの歌って、どうしてこんなにそそるんだろう? 俺も醤油を注がれてみたい。
第二歌集待っています。
ひと思いに散りながら咲く花嵐空の色さえ蟻は知らない (宮川聖子)
薄桜散り急ぐ日は花曇り空か花かを見紛うように (宮川聖子)
夜桜の下で寒くて鼻水が出そうで
君を大好きだった (佐藤真由美)
さよならとハローを同居させている
葉桜がいて背筋を伸ばす (佐藤真由美)

「ソラのサクラも満開です!」 Canon EOS 5Ds R, EF24-105mm F4L II IS USM, f11, 1/500sec., ISO100, WB:Daylight
ばかにされてとてもうれしい どすこいとしこを踏んだら桜咲くなり (初谷むい)
桜を見て動きが止まる全自動わんこあんまりきれいだったから (初谷むい)
こちらこそ いえ、こちらこそ 夕凪にほどかれてゆくさくらさらさら (鈴木美紀子)
さくらにも運命はありあんぱんのへそにすわってしっとりと咲く (鈴木美紀子)
あんぱんの元祖である銀座木村屋總本店のあんぱんは、当然のことながら「こしあん」で、へそに八重桜の塩漬けが鎮座する。これがつぶあんなどというがさつなあんでは絶対に成立しない老舗の一品だ。
あからひく朝を渡れる旋律となりて日本のさくら咲き継ぐ (大西久美子)
にんげんの瞼が剥がれてゆくやうな桜吹雪のまんなかにゐる (大西久美子)
それならばいってください散りそうな花びらばかり目が追う四月 (高田ほのか)
祖母からの葉書に貼られた花びらは屈んで拾ってくれたのでしょう (高田ほのか)
君知るや思ひ
ベルのたれ左党も下戸も花浮かべ
道東の遅い春。俺はしーちゃんと春採湖畔の丘にある公園の芝生の上に座って、いろいろと話をした。熱っぽく詩を語るしーちゃんの髪に、桜の花びらが付いているのが見えた。咄嗟に「髪に触るチャンスだ」と思ったが、その光景があまりにも眩しく美しかったので「髪に触れる」ことと「その姿をしっかりと目に焼き付けて置く」ことのどちらが得なのか俺の心は激しく揺れ動いた。結局後者を選んだんだけど、何も知らないしーちゃんは、花びらを髪にくっつけたまま帰りのバスに乗った。
しーちゃんの歌はひたすらベタで行くんだよね(笑)。
最後までお読みいただきまして大変お疲れ様でした。エア・オンザロックですが、まあ、スコッチで一杯飲ってくださいな(笑)。

「スコッチをはじめとしたウイスキーを水割りなどという『わざわざ不味くする加工』を施して飲るのは日本人だけです。せっかく世に出て来た酒なんですから、オンザロックかストレート+チェイサーで美味しく味わいましょう。それでこそウイスキーさんも本望というものです」
画像出典:ふぉと忍者 さん撮影によるこの作品は 写真AC から提供されています。
(こちらにも「短歌大会」のページがあります)
特別企画 ── 冬忘れ「にゃんこの短歌大会」をやってみる
特別企画 ── 秋忘れ「酒の短歌大会」をやってみる
特別企画 ── 納涼「怖い?短歌大会」をやってみる

↑ 大変お手数ですが、 ワンクリック のご支援をお願いたします! 「にほんブログ村ランキング」に参加しています。みなさまの ワンクリック のご支援が何よりの励みになります!
- 関連記事
-
-
「カミ」にまつわる話を書いてみる ── あ、ソラの「カミ」様のことじゃないからね 2020/05/23
-
しーちゃんの水中花 ── 異次元の花を見た日 2020/05/21
-
[特別企画] せめて「言葉の花見」を ── 春愁落とし「桜の短歌祭」をやってみる 2020/04/30
-
ソラにはね、その時にしかない雲のかたちがあるんだよ 2020/04/27
-
頑張れ Coal Miner's Son! 2020/04/18
-