不審者なんかじゃありません。ただの「ソラの写真屋」です! ── だから、それが怪しいんだよ!

昨年の冬至の日の出直後、何気なく目をやった東の低い空に出現していた「上部タンジェントアーク」。かすかに「22度ハロ(内暈)」と「パリーアーク」らしき淡い光彩も確認出来る。太陽が春へと回帰し始める日に相応しい賜物であると勝手に解釈することにした。
以前にも触れたことがあると思うが、ソラの写真を撮っている人間って、他人の目にはかなり怪しいヤツに見えていると思う(笑)。「一体何を撮っているんだろう?」なんてカメラを向けているソラを見ても、そこには何の変哲もないただのソラと雲しか見えない。ましてや、幻日や環水平アークという大気光学現象なんぞはフツーの人の目には決して見えていない(参照:「一体どこに出てるのよ!? ── 天空の幻日と地上の現実」)。「胡散臭いヤツだ」とか「もしかして危ない人では・・・」なんて思われても当然である。
まあ普通に考えて、真っ昼間でも尋常には見えないのに、朝方とか夕方にでかい一眼レフカメラを抱えてうろうろしている人間を見かけて「怪しく思うな」という方が無理な話である。いつもサイトへお邪魔させていただいているSさんは、夕方の撮影時には常に名刺や身分証明書を携行しているそうだ。笑い事ではない。俺の場合は、近所をうろついたり自宅のベランダから撮影することが多いんだけど、近所だからといって怪しく思われないかというと、決してそんなことはない。ご近所さんであろうがお隣さんであろうが、端から見て怪しげな行為をするヤツは怪しいのである(笑)。だから、俺は何年かに一度回って来る町内会の組長当番になった時に「ソラの写真が趣味でカメラを持ってうろうろすることもあります」という、幻日の写真などを入れた挨拶状を作って回覧することにしている。それで完全に誤解を払拭できているかというと、そこまでの自信もない(笑)。ないんだが、何もしないよりはましだと思うからやっている。少なくとも「ソラの写真を撮っている? いいご趣味ですねえ」なんてことだけは、決して思ってもらえていないという自信だけはある(笑)。
「滝屋サン」をメインにやっていた頃にも、しばしば不審者扱いされることがあった。こうなると「滝屋」だとか「ソラ屋」だとかいう問題ではなく「俺自身が本当に怪しく見えるからなのでは・・・」という疑問も、ちらっと脳裏をかすめたりする(笑)。その中には、こんな経験もあった。
ある年の春、俺は某山域のS沢に入り浸っていた。そこら一帯の山系・山域は国有地だという認識があったし、何の疑問も抱くことなく毎週のように入渓していたんだね。そしてある日の帰路、下流の方から遡って来る人を見かけた。もう午後3時を回っていたし、沢屋でも釣り屋でもその時刻から入渓して来る人間はまずいない。「おかしいな」と思いつつ「こんにちは」と挨拶をしたら、その人に「ちょっといいですか?」と呼び止められたんだ。実はその人は警察官で、県警の山岳救助隊のメンバーでもある方だったんだよ(笑)。何と、この山域でもS沢筋周辺だけは私有地で、地主さんから密漁者が沢に入っていると通報があったのだそうだ(笑)。すぐにザックの中身から、装備品から一切合切を広げて見せて「滝の写真以外は何も取(撮)っていない」ことを説明して誤解を解いてもらったけど、冷や汗もんだった(笑)。
たまたま俺が入渓するところを見かけた地主さんが、てっきり密漁者だと勘違いしたらしい。確かに遠目には、三脚を担いだり背負ったりしている姿は釣り屋に見えるかも知れないと思ったよ(笑)。警察官の話ぶりから、普通はこの程度のことでいちいち出向いたりはしないらしいのだが、どうも地主さんが地域一帯の有力者であるような印象を受けたんだね。そのIさんという警察官の方がすごくいい方で、誤解が解けて俺が滝屋だと知ると、この山系・山域のことをいろいろと教えてくれた。S沢の歴史的なエピソードや滝の名称、T沢の大滝やH沢の大滝などの秘瀑の存在や位置など貴重な情報を提供してもらった(山岳救助隊員である彼は、この山系・山域のオーソリティーでもある訳だからね)。文献・資料などにも載っておらず、もしこの出会いがなければ決して知り得なかった情報ばかりだった。また、こんな大事なことも教えてくれた。沢の入渓地点に近いところに民家があったら、それが地主さんであろうとなかろうと、きちんと挨拶してから入った方がいいということだ。不審者と思われないようにという意味合いもあるが、もし万が一遭難などの事態になった場合に、それが重要な情報になるからという話だった。以来、必ずそれを心がけて励行するようにしている。要は、コミュニケーションってどんな場合にも大事だってことなんだよね。
件の地主さんには、翌週手土産を持って謝罪に行った。既にIさんから話を聞いていたらしく、笑顔で応対してくれて「ハイカーや遡行者が入るような沢じゃないし、格好からてっきり密漁者かと思ったよ」と言われた。やはりそうだった(笑)。「もう顔も車もわかったから、これからはいつでも入っていいよ」言ってくれたのもうれしかった。お詫びにと、このS沢で一番大きく立派な「J滝」の写真をワイド四つ切りにプリント、額装してプレゼントしたらすごく喜んでくれた。今でも年賀状のやりとりをしている。この「J滝」という歴史的エピソードにちなんだ素晴らしい名称は、Iさんから教えてもらった。あの出会いがなければ、俺にとってこの滝は永遠に「S沢F7」という無味乾燥な記号的名称のままだっただろう。
大いに驚き、ちょっとほろ苦く、しみじみと懐かしい滝屋時代の思い出話を書いてみた。

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