FC2ブログ

ちょっといいエピソード ── 春採湖畔にある我が故郷釧路の老舗蕎麦屋のことを書いてみる

6 Comments
さえき奎(けい)
雲を消して行く飛行機雲(その3)「雲を消して行く飛行機雲(その3)」 Canon EOS 5Ds R, EF24-105mm F4L II IS USM, f11, 1/250sec., ISO100, WB:Daylight
3本の消滅飛行機雲が写っている。画像の下辺中央からやや左寄りから左辺中付近へややカーブしながら斜めに横切るものが1本、帯状の高積雲の上辺付近に沿ってトレイルが2本確認できると思う。過去記事で掲載した「雲を消して行く飛行機雲と消して行かない飛行機雲」の画像の位置的には西寄り(画像の右寄り)、時系列的には少し前のカットになる。

 以前の記事で何度も書いたが、北海道は日本有数の海の幸、山の幸の味覚を楽しめるところだ。これには誰も異存がないだろう。その中でも我が故郷釧路は、群を抜いて美味いものがわんさかとある街である。ラーメンもある、勝手丼もある、寿司も旨い、炉端焼きはいうまでもない、知る人ぞ知る釧路人のソウルフード泉屋総本店のスパカツなどなど、枚挙に暇がないほどだ。(参照:釧路市レストラン「泉屋」のスパカツ ── こんな日は、故郷のソウルフードを再現してみるのもいい
 そして、もう一つ忘れてならない名物が蕎麦である。そもそも蕎麦の本場は北海道である。街道沿いに、蕎麦一杯で二千円もぼったくるような店が軒を連ねる、自称蕎麦処を標榜する某県とは本質的に違う本当の本場である。釧路人はラーメン愛の人たちだが、同じように蕎麦も愛しているのだ。
 その「釧路の」というより、北海道でも老舗中の老舗の蕎麦屋が明治7年創業の「竹老園東屋総本店(ちくろうえんあずまやそうほんてん)」だ。初めて食べる人はまずその蕎麦の色に驚くと思う。きれいな翡翠色をしている。もちろん茶蕎麦ではない。茶蕎麦は茶蕎麦として別にある。市内には26店ほどの暖簾分けされた店が営業しているから、釧路で食べる蕎麦はこの翡翠色がデフォルトといってよい。私を含めて釧路人は「蕎麦とはこういう色をしたものだ」と刷り込みがされてしまっているのだ(笑)。


「定番メニューのもりそば」 更級の新蕎麦をイメージしてクロレラで翡翠色に着色されている。釧路人にとっては、これがノーマルでデフォルトな蕎麦の色だ。
画像出典:竹老園 東屋総本店公式ホームページ

 その辺りのことを語り始めると話が尽きそうもないので、そろそろ本題に移らせてもらうことにする。今を去ること六十余年、昭和天皇は、終戦直後の昭和21年(1946年)2月から約9年をかけて日本全国を巡幸、国民を慰め励まされた。そして昭和29年(1954年)8月16日のこと、その一環として来道された両陛下は釧路へとお出ましになった。御宿は釧路市内にあった「六園荘」という老舗の料亭で、そこから東家三代目伊藤徳治の元へ、両陛下に蕎麦を御膳上げしてほしいとの要請があった。六園荘の調理人が腕によりをかけて誂えた会席料理は、メフン和え・三平汁・ほっけの刺身・さんまの塩焼き・タラバガニなど十二品。そのコースの〆として伊藤が打った「蘭切りそば」を御膳上げするという大任である。以下、ドキュメンタリー風にその時の様子を再現してみたいと思う。
 当初はコースを御膳上げにと考えていたが、宮内庁主膳部の内規によって生姜、酢、わさび、葱の薬味は全てご法度となり、茶そばに使う抹茶も昂奮作用があるということで、献立は「蘭切りそば」と薬味として大根おろしのみということになった。夕餉が始まり、調理場に控える徳治。やがて支配人が顔を見せると徳治を見つけるなり「伊藤さん!」と呼びかけた。つかつかと歩み寄りながら、真剣な面持ちで「伊藤さん、陛下が、陛下が・・・」と繰り返す。この時の伊藤徳治の胸中はいかなるものであったであろうか。「嗚呼、俺は一体何をやらかしたんだ。東家も俺の代でおしまいか・・・」などと悲嘆にくれたであろうことは想像に難くない(というあくまでも筆者の想像、つまりフィクションであることをお断りしておく)。
 支配人は伊藤の前まで来ると「陛下が・・・」と繰り返し「陛下が、お代わりを所望しておられます」と結んだ。徳治は、自分の打った蕎麦を御膳上げするばかりか、陛下がお代わりを召されるというというこの上ない栄誉に与った感激の涙で、しばらくの間眼を開けることが出来なかったという。釧路人なら誰もが知っている、ちょっといいエピソードである。



画像上:竹老園 東屋総本店
画像下左:両陛下に御膳上げされた「蘭切りそば」。現在もメニューにありオーダー出来る。 画像下右:人気メニューの「そば寿司」
画像出典:竹老園 東屋総本店公式ホームページ

 現在の竹老園東屋総本店は市内の春採湖畔に建つ、二代目伊藤竹次郎が隠居後の住まいとして建てた屋敷を改装した店舗で、立派な庭園もある。「竹老園」の名はそのことに由来する。俺の母校は、現在は近傍の別の場所へ移転したが、この竹老園東屋総本店からほど近い春採湖を望む丘の上にあって、卒業アルバムの集合写真はこの庭園で撮影するのが恒例となっていた。そういう意味でも、懐かしく思い出深い場所である。


ヤバいよねグラリくらくら春採はるとり湖ボートの上の夏服のきみ


出典:「しーちゃんと僕 ── 春採湖のローレライ」

ブログランキング・にほんブログ村へ
  大変お手数ですが、 ワンクリックのご支援をお願いたします! 「にほんブログ村ランキング」に参加しています。みなさまの ワンクリックのご支援が何よりの励みになります!
関連記事
スポンサーサイト



さえき奎(けい)
Posted byさえき奎(けい)

Comments 6

There are no comments yet.
さえき奎(けい)
さえき奎  
Re: こんばんは

砂時計さん、こんにちは。いつもありがとうございます。

> 釧路のお蕎麦屋さんは美味しいと聞きます

おいしいですよ。道東方面へ行かれることがありましたら是非どうぞ。東家は暖簾分けした
お店が市内のそこかしかにありますが、やはり本店で味わっていただきたいと思います。

> 友人に阿寒出身の方。白糠出身の方がいて
> 良く釧路へ蕎麦を食べに行くそうです
> 御主人がお蕎麦大好き見たいです。

阿寒出身のご友人がおられるんですね。白糠町には阿寒町(現釧路市)雄別にあった有名店
「老麺 やはた」が営業していますね。あそこのラーメンは美味かったです。

> 釧路は海鮮と思いますが
> 蕎麦も美味しいんですね

そうなんです。あ、釧路ラーメンも美味いですから、是非「まるひら」へ(笑)。

2019/10/01 (Tue) 12:38 | EDIT | REPLY |   
砂時計  
こんばんは

釧路のお蕎麦屋さんは美味しいと聞きます
友人に阿寒出身の方。白糠出身の方がいて
良く釧路へ蕎麦を食べに行くそうです
御主人がお蕎麦大好き見たいです。
釧路は海鮮と思いますが
蕎麦も美味しいんですね

2019/09/30 (Mon) 22:19 | EDIT | REPLY |   
さえき奎(けい)
さえき奎  
Re: ざる蕎麦良いですね♪

がちょーさん、こんにちは。いつもありがとうございます。

> そば、良いですね!!

私も週一で必ず蕎麦を食べています。今住んでいるところはうどんが名物の街で、圧倒的に
うどん屋の方が多いんですね(笑)。蕎麦もやってはいるんですが、お品書きはすべて○○
うどん、□□うどんなどと書いてあり、最後に小さな字で「そばもあります」などと付け足しの
ように書いてあります(笑)。

> こちら新潟は今日も夏日で、帰りにスーパーで天ざる蕎麦を買って帰りますよ。
> 冷やし中華も食べたくなりました(笑)

また暑さがぶり返して真夏日になっていますね。このままずっと夏に頑張ってほしいものです(笑)。

2019/09/30 (Mon) 15:42 | EDIT | REPLY |   
さえき奎(けい)
さえき奎  
Re: 陛下のおかわりは珍しい事。

オグリン♪さん、こんにちは。いつもありがとうございます。

> 大変な名誉ですね、本当に美味しかったのだと思います。
> また、大変、お珍しくも思われたのではないでしょうか?

そのとおりですね。そしてこれが自称蕎麦処の某県ではなく、北海道の一辺境都市での
エピソードだというのがすごくうれしいです(笑)。その後も、上皇・上皇后両陛下
(もちろんご譲位される以前)、今上両陛下(皇太子・同妃殿下の頃)をはじめ皇族方も
相次いでご来店になったそうです。

> 陛下は、蕎麦と鰻が好物であらせられたとの事です。
> そうなのです、陛下は、蕎麦通でございました。

蕎麦もうどんもたいそうお好みだったようですね。私は今うどんが名物の街に住んで
いるのですが、ここのうどんも御贔屓にしていただいたそうです(一店はご視察の場所へ
出前され、もう一店はご来店されたそうです)。何かのご縁でそういう街に生まれ育ち、
そういう街に住んでいるんですね(笑)。

> 本場の「蘭切りそば」、私も一度食べてみたいモノです。

「蘭切りそば」は、卵黄をつなぎに使った蕎麦のことで「卵」に洒落て「蘭」の文字を
当てたそうです。道東旅行される機会がありましたら、是非是非ご賞味いただきたいと
思います。あ、でも何といっても、先に「まるひら」のラーメンからどうぞ(笑)。

2019/09/30 (Mon) 15:36 | EDIT | REPLY |   
がちょー  
ざる蕎麦良いですね♪

そば、良いですね!!
この季節はまだ暑いのでざる蕎麦が良いですよ。そこに揚げたての天ぷらでもありますと最高でもありましたね☆

こちら新潟は今日も夏日で、帰りにスーパーで天ざる蕎麦を買って帰りますよ。
冷やし中華も食べたくなりました(笑)

2019/09/30 (Mon) 12:34 | EDIT | REPLY |   
オグリン♪  
陛下のおかわりは珍しい事。

大変な名誉ですね、本当に美味しかったのだと思います。

また、大変、お珍しくも思われたのではないでしょうか?

陛下は、蕎麦と鰻が好物であらせられたとの事です。

そうなのです、陛下は、蕎麦通でございました。

本場の「蘭切りそば」、私も一度食べてみたいモノです。

2019/09/29 (Sun) 23:15 | EDIT | REPLY |   

コメントをどうぞ / Leave a reply