May Wind / 五月の風 [ストリートピアノの調べに乗って ── サラ・ティーズデールの詩を訳してみる 第12回]

五月の梅雨入りをなんとか免れた関東地方は、今日も爽やかな北海道サマーの一日だった。早いもので、その五月も今日が晦日となってしまった。先日掲載したクリスティーナ・ロセッティの"May / 五月"に続いて、本日は逝ける五月への鎮魂の意味を込めサラ・ティーズデールの一篇を拙訳にてご紹介させていただきたいと思う。(参照:May / 五月 ── クリスティーナ・ロセッティの詩を読んでみる 第9回)
"May Wind"
Sara Teasdale
I said, "I have shut my heart
As one shuts an open door,
That Love may starve therein
And trouble me no more."
But over the roofs there came
The wet new wind of May,
And a tune blew up from the curb
Where the street-pianos play.
My room was white with the sun
And Love cried out in me,
"I am strong, I will break your heart
Unless you set me free."
「五月の風」
サラ・ティーズデール
私は言った「ドアを閉め切るように
私は心を閉ざしたのよ。
その愛はもうおしまいなの。
これ以上私を苦しめないで」
けれども屋並の向こうから
五月のみずみずしい風が吹き渡り
舗道に置かれたストリートピアノは
高らかに調べを奏でていた
日射しに
その愛が心の内で叫んでいた
「私は強いの。出してくれないのなら
あなたの心をこじ開けてやるから」
(さえき奎 訳)
前回ご紹介した"The River / 川の嘆き"と同様に、サラの多くの作品に共通するモチーフだと思う。彼女は相思相愛だった恋人(終生プラトニックな関係だったといわれている)とは結ばれず、結局別の男性の求婚を受け入れたが、この結婚は不幸な結末を迎えている。その2年後にかつての恋人は自死し、サラもまたその後を追うように自らの命を絶っている。この一篇は、愛に対する願望なのか、渇望なのか、あるいは希望なのか・・・。詩歌句は読まれた瞬間から読み手のものとなるので、皆様のご判断にお任せしたいと思う。
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次回へ続く : 掲載時期未定

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