【改訂版】 What are Heavy? Sea-sand and Sorrow / どちらなの? ── クリスティーナ・ロセッティの詩を読んでみる 第6回

梅雨入りしたからという訳じゃないが、今日は仕事も、プライベート案件も、何もかもがしっくりと行かない一日だった。仕事もそこそこに一杯飲り始めたんだが、当然のことながら酒もイマイチ美味くないんだよね(笑)。
"What are heavy? sea-sand and sorrow"
Christina Rossetti
What are heavy? sea-sand and sorrow:
What are brief? to-day and tomorrow:
What are frail? Spring blossoms and youth:
What are deep? the ocean and truth:
出典:"SING-SONG – A Nursery Ryme Book"(クリスティーナ・ロセッティ童謡集)1893年 所収

アーサー・ヒューズによる"SING-SONG – A Nursery Ryme Book"のオリジナル挿絵
「どちらなの」
クリスティーナ・ロセッティ
どちらが重いの、
海のすなと悲しみと。
どちらがみじかいの、
きょうとあすと。
どちらがもろいの、
春の花と青春と。
どちらがふかいの、
海と真理と。
(三井ふたばこ 訳)
出典:『少年少女世界文学全集 第50巻 世界少年少女詩集/世界童謡集』所収 (昭和37年/1961年 講談社刊)
「
クリスチナ・ロセッティ
あすの日とけふの日と どっちが短い
春の花と若さとは どっちが
(入江直祐 訳)
出典:『クリスチナ・ロセッティ詩抄』所収 (昭和40年/1965年 岩波書店刊)
「なにがおもいの」
クリスティーナ・ロセッティ
なにが おもいの うみのすなと かなしみ
なにが みじかいの きょうと あした
なにが もろいの はるのはなと わかさ
なにが ふかいの おおきなうみと しんじつ
(安藤幸江 訳)
出典:『クリスティーナ・ロセッティ シング・ソング童謡集』所収 (平成14年/2002年 文芸社刊)
クリスティーナらしい佳作だと思う。前回の「I Wish I Were A Little Bird / 望み ── クリスティーナ・ロセッティの詩を読んでみる 第5回」で好評だった羽矢謙一氏の訳を探してみたんだが、残念ながら見当たらなかった。著名な、三井ふたば子氏(詩人西条八十氏の長女)訳とともに、入江直祐氏、安藤幸江氏訳を比較鑑賞してみてほしい。
しかしこのような小品であればあるほど、一旦誰かの翻訳を目にしてしまうと、自分自身の翻訳は困難を極めるだろうなとということは想像に難くないんだよね。俺自身が何度も経験しているんだけど、言葉の重複を避けよう、違う表現にしようという意識の方が先立ってしまって結局不自然な訳になってしまうことがしばしばあった。人間は機械じゃないんで「それじゃ一度メモリーをクリアします」なんて訳にはいかないんだからさ(笑)。
具体的にいうと"frail"の訳は、おそらく最初に訳したと思われる入江氏の「儚い」意外はあり得ないと思う。「花がもろい」なんて普通の日本語では言わないからね。何故に三井ふたば子・安藤幸江両氏が揃ってこの不自然な「もろい」を採用したか、その辺りの真相はわからないんだけれど・・・。
しかし"sorrow"と"tommorrow"、"youth"と"truth"の韻の美しさもさることながら、対比も意味深なものがあるよね。さんざん酔っ払っちまっている今の俺だったら
どちらがイカの塩辛に合うの、
ホワイトラムと芋焼酎と。
どちらがミモレットに合うの、
カヴァとヌーボーと。
なんてやってしまいそうだ(笑)。あ、ごめん、クリスティーナ。君にモヒートもどきスペシャルを献杯!
第5回へ戻る:I Wish I Were A Little Bird / 望み ── クリスティーナ・ロセッティの詩を読んでみる 第5回
第7回へ行く:Boats Sail on the Rivers / If All Were Rain and Never Sun ── クリスティーナ・ロセッティの詩を読んでみる 第7回

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